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地域包括ケアシステムってなに?わかりやすく事例を紹介します。

 

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地域包括ケアシステムは今後増加していく高齢者が、住み慣れた地域でいつまでの生活していく為の取り組みであり、自宅などの住まい、病院などの「医療」、老人ホームや訪問サービス事業所などの「介護」、ボランティアなどの「生活支援」を柱とした取り組みです。

 

 

高齢者がいつまでも住み慣れた地域で生活が出来るように、地域が包括的に支援をしていくシステムとなっています。

ここでは、地域包括ケアシステムについて詳しくご紹介していきます!

 

 

地域包括ケアシステムができた背景

 

地域包括ケアシステムの内容を詳しく説明する前に、まずはなぜ地域包括ケアシステムが出来たのか?背景を知っておかなければなりません。

地域包括ケアシステムが出来た理由としてはいくつかあります。それぞれ見ていきましょう!

 

 

老人ホームが足りなくなってきた

 

在宅介護で生活が難しくなれば老人ホームに入居するのが一般的ですが、高齢者の数に対して老人ホームの数が足りなくなってきている現状があります。

そのため、今は老人ホームに入居するぐらいの介護度でも地域包括ケアシステムでは在宅で過ごすことを推奨しています。

 

それが如実に表れているのが、特養の入居基準です。特養の入居基準は以前までは要介護1以上でしたが、法改正により要介護3以上しか入居できなくなりました。

要介護3までは在宅で生活をするように推奨されているのです

 

要介護3の方でも地域で生活が出来るように、在宅サービスを充実させたりなどするのが地域包括ケアシステムであるといえます。

 

 

介護報酬を抑えるため

 

高齢者の数は年々増加してきており、介護保険を使う方は非常に多くなってきています。

介護保険は税金と保険料で成り立っていますので、その分使う方が多いと税金と保険料の負担が多くなるのです。

 

在宅で介護が必要になり、在宅で介護を行うことが出来なくなれば通常では老人ホームに入りますが、老人ホームでの介護報酬は在宅に比べると高いので、その報酬を抑えるためにも在宅での生活を維持してもらう地域包括ケアシステムが大切になってくるのです。

 

施設介護の場合は一日あたりの単位数が決められており、居住している限り毎日同じ単位数が必要となります。

しかし、在宅の場合は使った分だけ単位数が発生するため、自然と在宅の方が単位数が低くなる傾向があります。

 

 

認知症でも地域で生活が出来るように

認知症の数も高齢者の数と一緒に増加してきています。

認知症では家族がいれば問題行動を起こしたとしても問題解決をすることが出来ますが、家族がいない場合は一人で生活をすることが一気に難しくなります。

 

地域包括ケアシステムでは認知症の方のサポートも重点目標としておいています。自治体によっては認知症ケアサポーターという資格を発行して、地域に住む方に対して講習を行っています

 

地域全体が認知症のことを理解して、認知症の方をサポートすることによって、たとえ独居高齢者で認知症になったとしても安全に生活を出来るようにするのが地域包括ケアシステムに求められています。

 

 

 

地域包括ケアシステムの取り組み

 

では次は地域包括ケアシステムでは地域は実際にどのような取り組みを行っているのでしょうか?それぞれ詳しく見ていきましょう!

 

高齢者の住まいについて

 

高齢者の住まいは、高齢者の自宅です。地域包括ケアシステムでは高齢者の住まいは自宅の他に、サービス付き高齢者向け住宅も想定しています。

バリアフリーが整っている自宅やマンションであれば多少足が悪くても問題なく生活が出来ますが、全ての自宅がそういうわけではありません。

 

サービス付き高齢者向け住宅では、バリアフリーが整っていますしナースコールなども配置されていますので、高齢者にとっては住みやすい自宅であるといえます。

 

 

医療について

 

病気になった場合は医療が関わります。地域包括ケアシステムでの医療は病院になります。

病院といってもかかりつけ医、地域と深く連携している病院です。往診医もそれにあたります。

 

そのため、高齢者自身が行く場合もありますし、医師が高齢者の自宅に行くことも想定されています。

 

 

介護について

 

介護が必要になれば、在宅系のサービスが高齢者を支えます

訪問介護訪問看護などの自宅でサービスを実施する場合や、デイサービスやショートステイなど高齢者が施設に通うパターンもあります。

介護には在宅系サービスと施設系サービスがあります。

施設系サービスには特養や老健グループホームがあります。

 

 

生活支援、介護予防

 

生活支援と介護予防では地域住民や老人クラブ自治会、ボランティアやNPO法人などがそれにあたります。生活をきちんと送れるように支援をしたり、介護状態にならないように取り組んだりしています。

 

特徴としては、地域の住民も含まれているということです。

地域の高齢者が高齢者を支えるという場面も想定されています。

そのため、高齢者向けに介護の講習を行ったり、高齢者向けに医師が病気予防のために講習を行うこともあります。

 

 

コーディネート

 

地域包括ケアシステムは非常に良い取り組みですが、それらのサービスを誰がどのように高齢者につなげていくのでしょうか。

 

その答えとしては地域包括支援センターの職員や地域で働くケアマネジャーが担っています。

地域包括支援センターとケアマネジャーは地域の社会資源と高齢者をつなぐ役割がありますので、医療やボランティア、介護サービス事業所の情報を把握して、困っている高齢者がサービスを使えるように支援をしていきます。

 

 

 

地域包括ケアシステムが良く分かる事例

 

 

地域包括ケアシステムは非常に期待されているシステムですが、実際それはどのような働きをするのかイメージしにくいかと思います。

 

ここでは、ある高齢者のAさんを例にとって、地域包括ケアシステムの中でどのような生活をしているのかご紹介していきます。

 

地域包括ケアシステムの中で生活するAさんの場合

 

ステップ1

Aさんは独り暮らしの高齢者です。

Aさんは仕事を退職してからは一人でゆっくりと集合住宅で生活をしていました。Aさんは足が悪く定期的に受診をしていましたが、それ以外は特に変わりなく過ごしていました。

 

しかし、ある日からAさんの足の状態は悪くなり、一人で外出することが億劫になってきたのです。

定期的に行っていた通院は遠いので行けなくなり、買い物も億劫になってしまって自分で宅配弁当や宅配ピザなどを注文して食事を食べていたのです。

 

ここで問題点が3つ出てきました。

①足が悪くなっているので病院に行けない。

②栄養状態が悪くなる。

③ゴミ出しなどが出来なくなった。

 

 

ステップ2

Aさんはまじめな性格でしたので、定期的に受診にいっていました。

しかし、足が悪くなり通院が出来なくなりました。

決められた回数Aさんが受診に来ないことを不思議に思った医師は、地域の民生委員に連絡をとってAさんの様子を見てもらうように依頼をしました。

民生委員はAさんの自宅に訪れました。すると、Aさんの自宅はゴミ屋敷のようになっており、非常に不衛生な環境で生活をしていました。

民生委員は地域の清掃ボランティアに声をかけて掃除をしてもらうと同時に、医師に連絡をして往診に来てもらうように依頼をしました。

ここで①足が悪くなっているので病院に行けないという問題点は解決されました。

 

②の栄養状態が悪くなるという点に関しては、地域包括支援センターが関わることに。

地域包括支援センターが知っている栄養管理された宅配弁当屋が、毎食持ってきてもらうように手配を行いました。

 

③のゴミ出しなどが出来なくなったという点に関しては、NPO法人が格安でゴミ出しをしてくれるサービスをしていましたので、それを使うことにしました。

 

 

ステップ3

Aさんは足の状態が悪く、見立てでは要支援2程度でしたので、地域包括支援センターのケアマネジャーがAさんの担当となり介護サービスを受けれるように手配していきました。

 

介護保険の申請や事業所の手配などを行ったのです。

 

Aさんは要支援2が出て、週2回のヘルパーと週に2回のデイサービスに行くようになったのです。ヘ

ルパーは掃除を主に行って、デイサービスではお風呂に入ることが出来ました。

 

 

 

このように地域が連携をとれていると、問題が起きた際に発見がしやすく、

手厚い支援を素早くすることが出来るのです。

民生委員やNPO法人に関しては地域ごとによって差がありますが、地域包括ケアシステムが始まり整備されつつあります。

 

 

 

地域包括ケアシステムの課題

 

地域包括ケアシステムは増加してくる高齢者に対応するためのシステムとして注目されていますが、その課題はいくつかあります。どのような課題があるのでしょうか?

 

 

社会資源が足りない

 

介護サービス事業所の数は増加してきていますが、まだまだ足りないのが現状です。

そのため介護サービスを受けたいと思ってもそのサービスを実施しているところが少なく、満足にサービスが受けられないということも起きます。

 

また、ボランティアなどに関しては、全く足りていないというのが現状であり、その確保については難航しています。それに加えて特養の数も足りていないですし、増加する高齢者に対して社会資源は足りていないところが多いといえます。

 

 

認知度が低い

 

地域包括ケアシステムは介護従事者などには知れ渡っていますが、まだまだ世間での認知度は低く、地域包括支援センターや民生委員、介護サービスについても知らない人が多いのです。

 

介護状態になって困った場合、周りが気付いてくれればよいのですが、多くの場合自分で申告をしないといけません。

介護サービスを使うには自己申請によって介護認定を受けるぐらいですので、自分である程度地域包括ケアシステムについて知っておく必要があるのです。

 

まだまだ認知度が低いので、地域包括ケアシステムを知らないためにサービスを使えないという方もいるのが課題であるといえます。

 

 

最後に

地域包括ケアシステムに関しては、地域の高齢者が安全に生活するために必要なものであり、それはまだまだ発展途上であるといえます。

介護従事者はもちろん知っておきたいシステムであると同時に、地域で生活する住民の方も是非知っておいてもらいたいシステムであるといえますね!